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京都地方裁判所 昭和56年(わ)255号 判決 1981年4月22日

裁判所書記官

川元治生

本籍

京都市中京区寺町通六角下る中筋町四八八番地

住居

同市北区上賀茂菖蒲園町七九番地

旅館経営

久保富男

大正一三年四月一〇生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官和田敏行出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、京都市北区上賀茂菖蒲園町七九番地において、旅館「ホテル古京」を営んでいるものであるが、所得税を免れようと企て、

第一、昭和五二年分の総所得金額は四七一六万六八四〇円で、これに対する所得税額は二一〇〇万一七〇〇円であったにもかかわらず、公表経理上売上金の一部を除外し、これによって得た資金を架空名義の普通預金にするなどの不正な方法を用いて所得を秘匿したうえ、同五三年三月一四日同市上京区所在の所轄上京税務署において、同税務署長に対し、同五二年分の総所得金額は九五一万一一五四円で、これに対する所得税額は二二四万三九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二一〇〇万一七〇〇円と右申告にかかる所得税額との差額一八七五万七八〇〇円を免れ、

第二、昭和五三年分の総所得金額は四六一九万四八六三円で、これに対する所得税額は二二一二万三〇〇円であったにもかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、同五四年三月一四日前記上京税務署において、同税務署長に対し、同五三年分の総所得金額は九八二万三三二円で、これに対する所得税額は二三六万一四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二二一二万三〇〇円と右申告にかかる所得税額との差額一九七五万八九〇〇円を免れ、

第三、昭和五四年分の総所得金額は四七七六万九一一六円で、これに対する所得税額は二一七三万四三〇〇円であったにもかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、同五五年三月一三日前記上京税務署において、同税務署長に対し、同五四年分の総所得金額は一一二三万四八九七円で、これに対する所得税額は二六三万七四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二一七三万四三〇〇円と右申告にかかる所得税額との差額一九〇九万六九〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書(検第九四号)

一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検第八二号ないし第九三号)

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料付表(検第一一号)

一、西村美知子、山本正樹の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検第六四号、第六五号)

一、国税査察官作成の写真撮影報告書(検第三〇号)

判示第一の事実について

一、大蔵事務官作成の証明書、脱税額計算書、脱税額計算説明資料、(検第二号、第五号、第八号)

判示第二の事実について

一、大蔵事務官作成の証明書、脱税額計算書、脱税額計算書説明資料、(検第三号、第六号、第九号)

判示第三の事実について

一、大蔵事務官作成の証明書、脱税額計算書、脱税額計算書説明資料(検第四号、第七号、第一〇号)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一二〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 安原清蔵)

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